[math]y = \sin x[/math] をマクローリン展開によって [math]n[/math] 次まで近似したものです。[br]図はドラッグで移動、マウスのホイールまたは2本指ピンチで拡大・縮小できます。
かなりの勢いで [math]y = \sin x[/math] に近づいていっている様子が分かりますが、[br]これらの関数をリンク機構で表現するには、例えば7次の時点で、[br]7! = 5040 というかなり大きな比を扱う必要があります。[br](扱うのが不可能なわけではありません)[br]また、この近似では、11次に至っても [math]2\pi[/math] まで近似の精度が保てず、[br][math]x[/math] に [math]2π[/math] を超える値を直接代入する、ということができません。[br]そこで、幾何的性質を生かしたより優れた近似の方法を考えます。[br][br][math]x[/math] の絶対値が十分に小さいとき、[math]\sin x \cong x[/math] という近似が成り立ちます。[br]これを利用します。[br][br][br][br]①拡大器で[math]x[/math] を、[math]| \frac{x}{n} | \ll 1[/math]が成り立つよう [math]\frac{1}{n}[/math]倍します。[br][br]②[math] \frac{x}{n} = \sin \frac{\theta}{n}[/math] であるような角度 [math]\frac{\theta}{n}[/math] を、直線と円の交点を取ることで得ます。[math]\frac{x}{n} \cong \frac{\theta}{n}[/math] です。[br][br]③逆転器で [math]\frac{\theta}{n}[/math] を [math]n[/math] 倍します。[math]x \cong \theta[/math] です。[br][br]④直交座標の抽出器で [math]\sin \theta[/math] を取り出し、点 [math](x, \sin \theta)[/math] を置きます。[br][br][math]x[/math] を動かすことで、[math]y = \sin x[/math] を描くことができます。[br][br]要するに、距離としての [math]x[/math] と角度としての [math]\sin x[/math] の差がほとんど無くなる所まで [math]x[/math] を縮め、[br]角度に変換した後、再び引き伸ばしたのです。
少々煩雑ですが、[math]y = \sin x[/math] を近似するリンク機構の概要です。[br]上記の手順に従って、赤→ピンク→水色→青→紫→白、と点を変換していきます。[br]角度の [math]n[/math] 倍で多くの逆転器を必要としますが、[br]ここまででマクローリン展開のように巨大な数は出てきていません。[br][br][br]このリンケージが描く曲線は、媒介変数表示で[br] [math]y = \sin \theta , x = n \sin \frac{\theta}{n}[/math][br]あるいは、逆三角関数 [math]\arcsin[/math] で表記して[br][math]y = \sin ( n \arcsin \frac{x}{n} )[/math][br]と表せます。
[br]2つの近似を比較した図です。[br][br]縮小拡大による近似の方は、[math]m[/math] に対して [math]\frac{1}{2^{m-1}}[/math] 倍するようにしてあります。[br][math]m=11[/math] で1024倍、逆転器を10個重ねて使うことになりますが、[math]11!=39916800[/math] などと比べれば微々たるものです。[br][br]残念ながら、[math]|x|<\frac{2}{\pi}[/math] あたりの区間ではマクローリン展開に遅れをとりますが、特徴的なのはその先で、縮小拡大近似の方はかなり大きな値まで近似の精度を保っています。[br][br]さらに、この近似は関数を近似するマクローリン展開とは異なり、[br]「距離[math]\Leftrightarrow[/math]角度」という変換を近似しているので、[br]これを利用して、角度に対する四則演算や極座標表示の関数の描画などが(近似的に)可能になります。