このページは[url=https://www.geogebra.org/m/ddm5798j]マス旅[/url]の一部です。[br][br]今回は「最小曲面と平均曲率」がテーマです。[br]
針金でつくった輪っかを石鹸水に浸して静かに引き上げると、きれいな膜が張ります。[br][br]2つの平行な円形リングを引き上げると、まっすぐな円柱ではなく、中央がすっとくびれた鼓(つづみ)のような形になります。[br][br]2つのリングを少しずつ遠ざけていくと、くびれはどんどん細くなっていきます。そしてある限界の距離を超えた瞬間、膜は耐えきれなくなってパチンと弾け、2つの円枠にそれぞれ平らな円膜を残して分断されてしまいます。[br]シャボン膜は「できるだけ表面積を小さくしてエネルギーを最小に抑えよう」[br]と自律的に形を変えます。[br]この力を「表面張力」と呼ぶことは有名ですね。
これらの物理現象は数学の曲率が隠れています。[br][br][b][size=150]<最小曲面>[br][/size][/b][br]前回学んだガウス曲率 K = κ_1 κ_2は「2つの曲率の積」でした。[br]今回は平均曲率 H (2つの主曲率の平均)[br][br][color=#0000ff][b][size=200]H = {κ_1 + κ_2}/2[br][/size][/b][/color][br]これが主役です。[br][br]曲面上のすべての点において H = 0(すなわち κ_1=-κ_2)[br]となる曲面を「最小曲面」と呼びます。[br][br]「最小曲面」はどの点でも主曲率の2値の絶対値が等しく符号が逆になるから、[br]どこを切っても局所的にバランスのいいサドルでできている、[br]「理想のサドル」です。[br][br][b][size=150]<最小曲面の例>[br][/size][/b][br]では、最小曲面にはどんなものがあるでしょう。[br]平面があります。[br]単純でつまらないですが、[br]κ_1=κ_2=0だから、H=0ですから最小曲面の定義にあてはまります。[br]平面も理想のサドルの仲間なんですね。[br][br][b]他には、懸垂面 、螺旋面、[br]エネッパー曲面、シェルクの曲面リーマンの極小曲面[br][/b]などがあります。[br][br][b]懸垂面(カテノイド)[/b]は懸垂線(カテナリー)を回転させてできた曲面[br][b]螺旋面(ヘリコイド)[/b]はらせん階段のような曲面。[br][b]エネッパー曲面[/b]は数式はシンプルですが、大きく広がると自己交差を持つ曲面。[br][b]シェルクの曲面[/b]は周期的な構造を持つ曲面。[br][b]リーマンの極小曲面[/b]は無限に繰り返される波状の曲面。[br][br][b]<カテノイドの破綻>[br][/b][br]懸垂線(カテナリー)はロープを垂らしてできる線でした。[br]放物線y=x^2を少し膨らましたようなy=acosh(x/a)という数式で表すことができたね。[br](双曲余弦cosh(t)={e^t+e^(-t)}/2)[br]x軸に向かって垂れ下がる形です。[br][br]このxをzに置き換えると、[br]z軸に向かって垂れ下がる曲線になる。[br]それをz軸で回転したものが懸垂面(カテノイド)だ。[br]z=vの値で回転体を切断すると、半径がr=c*cosh(v/c)の円ができる。[br][br]だから、円の回転角をuとすると、'(x,y)=(rcos(u),rsin(u))となるので、[br]カテノイドのパラメータ表示は、[br][b]x=c*cosh(v/c)*cos(u), [br]y=c*cosh(v/c)*sin(u), [br]z=v[br][/b][br]ここで、cos(u)^2+sin(u)^2=1から、x^2+y^2=c^2 cosh^2(z/c)とも表すことができるね。[br][br]2つの円形リングの間のシャボン膜が破綻する条件は、すでに計算されています。[br]リング間の距離 h とリングの半径 R の比(h / R)において、[br]半分の高さと半径の比((h/2) / R)が約 0.663、[br]つまり、全体の間隔比 h / R ≈ 1.325を超えると、[br]「[b]カテノイドを維持する数学的な解[/b]」が存在しなくなります。[br][br][b][size=150]<カテノイドとヘリコイドの変身>[br][/size][/b][br]カテノイドとヘリコイド。[br]この2つの曲面は、見た目が全然ちがいますね。[br]それでも、[br]H=0という共通点があるというのは面白いですね。[br]共通点はそれだけではないのです。[br]複素解析で学ぶテーマの1つに等角写像がありますね。[br]カテノイドとヘリコイドは「等角で等長な写像」を通じて、[br]表面の長さや面積(第一基本形式)を一切変えずに滑らかに連続変形できるのです。[br][br]数式で見てみよう。[br]半径cの円柱を上るらせんは(c*cos(u), c*sin (u), c*u)とかけるね。[br]らせん面はz軸かららせんに垂線を下ろして足場を作った面です。[br]cを定数でなく0から∞にすると、z軸から無限の幅のあるらせん面ができるね。[br]この直線方向の変化させるためにx,yのcをc*sinh(v)にすると、[br][b][color=#0000ff][size=150][size=200](c*sinh(v)*cos(u), c*sinh(v)*sin(u),c*u)[/size][br][/size][/color][/b]これが、カテノイドに似たヘリコイドの式だ。[br]カテノイドは、[br][b](c*cosh(v/c)*cos(u), c*cosh(v/c)*sin(u),v)[br][/b]v/c,vはc倍するとvとc*vになるから、[br][b][color=#0000ff][size=200](c*cosh(v)*cos(u), c*cosh(v)*sin(u),c*v)[br][/size][/color][/b][br]だから、かなり近い。[br]こうなると、[b]カテノイドがcoshだったのをsinhにして、zのパラメータを変えただけ[/b]になる。[br][br]そこで、[br][br][b]x = cosα*c*cosh(v)*cos(u) + sinα*c*sinh(v)sin(u)[br]y = cosα*c*cosh(v)*sin(u) - sinα*c*sinh(v)cos(u) [br]z = cosα*c*v + sin(α)*c*u [br][/b]とおこう。[br][br]α=0だと、cosα=1,sinα=0で、[br]第1項(カテノイド)が取り出されます。[br]α=π/2だと、cosα=0,sinα=1から第2項(ヘリコイド)のみになります。[br]ヘリコイドのsin,cosがx,yで逆になり、cosに-がついている。[br]これは、連続変形をしたあとの位相が90度ずれてしまうためなのでもとの式と等価だね。
[br][b][size=150]<geogebra>[br][/size][/b][br]★タイトル「カテノイドからヘリコイドへの変身」[br]#パラメータalphaは、0: カテノイド、 pi/2: ヘリコイドです。[br]#設定>上級>アニメーション>タイプを「増加」[br][br]alpha = Slider(0, pi / 2, 0.01)[br][br]S = Surface(cos(alpha)*cosh(v)*cos(u) + sin(alpha)*sinh(v)*sin(u), cos(alpha)*cosh(v)*sin(u) - sin(alpha)*sinh(v)*cos(u), u*sin(alpha) + v*cos(alpha), u, -pi, pi, v, -2, 2)[br][br][br][br]★タイトル「カテノイドの消滅」[br]#2リングの距離h、設定>上級>アニメーション>タイプを「増加」[br]h = Slider(0.5, 2.0, 0.01)[br][br]#くびれパラメータ c[br]# h > 1.325 で解なし[br]S = If(h <= 1.325, Surface(cosh(v)*cos(u), cosh(v)*sin(u), v, u, -pi, pi, v, -h, h))[br]#上下の円形リング[br]ring1 = Curve(cosh(h)*cos(u), cosh(h)*sin(u), h, u, -pi, pi)[br]ring2 = Curve(cosh(h)*cos(u), cosh(h)*sin(u), -h, u, -pi, pi)[br][br]#限界を超えた(弾けた)ときに枠内に残る2つの平らな円形膜(円盤)[br]cap1 = If(h > 1.325, Surface(r*cos(u), r*sin(u), h, u, -pi, pi, r, 0, cosh(h)))[br]cap2 = If(h > 1.325, Surface(r*cos(u), r*sin(u), -h, u, -pi, pi, r, 0, cosh(h)))[br][br][br][br]
[b][size=150]<振り返り>[/size][/b][br][br]・カテノイドからヘリコイドへの変身[br][br]スライダー alphaをアニメーションしてみよう。[br]真ん中に穴の空いたカテノイドが、[color=#0000ff][b][size=150]滑らかに捻れながら[br][/size][/b][/color]らせん状のヘリコイドへと変化します。[br][br][color=#0000ff][b][size=150]とても神秘的ですね。驚異的な変形[/size][/b][/color]だと思いませんか。[br][br]この間、曲面上の任意の2点間の「距離」や「面積」は一切変わっていません。[br]平均曲率 H=0のままで、さらにガウス曲率Kも不変です。[br][br]・カテノイドが消える瞬間[br][br]geogebraで、図形が消えたり、数値が消えたりするのは、[br]「?」(未定義)になったときです。[br]でもカテノイドが消えるのは、[br]「[b]解なし[/b]」になるためです。[br]スライダー h を動かして限界値(1.325)を超えた瞬間、[br]中央のくびれたカテノイドが「[color=#0000ff][b][size=150]パチンと消え[/size][/b][/color]」、[br]上下の針金リングの中に平らな円膜(cap1, cap2)が残ります。[br]